※本記事は、過去の出題分布表と令和8年の企業経営理論の出題問題をAIに読み込ませて分析した結果です。ご参考までに。
令和8年度(2026年)の企業経営理論、戦略パートの13問を、過去12年分の出題分類表と突き合わせて分析しました。結論から言うと、R08は第1問から第13問までがテキストの章立てとぴったり同じ順番で並んだ、12年で初めての年でした。一方で、13問のうち6問はこの12年間で一度も出ていない論点です。この「型は完全に固まったのに、中身は新しい」という二重構造が、R09以降の学習戦略を考えるうえでの出発点になります。
1.前提|どのデータを、どう数えたか
分析対象は、平成27年度から令和8年度までの12年分、企業経営理論のうち「経営戦略論」に該当する設問です。章立ては市販テキストで一般的な次の8分類を用いました。
- 第1章 戦略の考え方(戦略的意思決定・環境分析・VRIO)
- 第2章 企業戦略(ドメイン・PPM・多角化・M&A・垂直統合)
- 第3章 競争戦略(5フォース・バリューチェーン・競争地位別戦略)
- 第4章 技術経営(MOT)(技術戦略・製品アーキテクチャ・イノベーション)
- 第5章 国際経営戦略
- 第6章 企業の社会的責任
- 第7章 ファミリービジネスの戦略
- 第8章 その他経営戦略論に関する事項
設問1・設問2に分かれている問題は1問として数えています。この基準で12年合計147問、1年あたり10〜13問です。数え方の細かい前提は末尾の「付記」にまとめました。
2.12年の全体像|どの章から何問出ているか

図1 章別出題数の推移(H27〜R08、設問統合ベース)
表1 章別・年度別の出題数
| 章 | H27 | H28 | H29 | H30 | R01 | R02 | R03 | R04 | R05 | R06 | R07 | R08 | 計 |
| 第1章 戦略の考え方 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 3 | 3 | 2 | 23 |
| 第2章 企業戦略 | 2 | 2 | 5 | 2 | 4 | 2 | 3 | 4 | 3 | 4 | 2 | 2 | 35 |
| 第3章 競争戦略 | 2 | 3 | 1 | 3 | 1 | 3 | 3 | 1 | 3 | 2 | 3 | 4 | 29 |
| 第4章 技術経営(MOT) | 4 | 3 | 1 | 4 | 4 | 4 | 2 | 1 | 3 | 2 | 3 | 2 | 33 |
| 第5章 国際経営戦略 | 1 | – | 1 | 1 | – | – | – | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 8 |
| 第6章 企業の社会的責任 | – | – | – | – | – | – | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 6 |
| 第7章 ファミリービジネス | – | – | – | 1 | – | 2 | 1 | 1 | – | – | – | 1 | 6 |
| 第8章 その他 | 1 | 1 | 3 | – | 1 | – | 1 | – | – | – | – | – | 7 |
| 合計 | 11 | 10 | 13 | 13 | 12 | 13 | 13 | 11 | 12 | 13 | 13 | 13 | 147 |
12年を通して見ると、出題の中心は第2章 企業戦略(35問)、第4章 技術経営(33問)、第3章 競争戦略(29問)の3つです。この3章だけで97問、全体の66%を占めます。ここが主戦場であることは12年間ずっと変わっていません。
3.出題テーマ別のランキング
章をさらに中分類に割ると、どのテーマが繰り返し狙われているかがはっきりします。
表2 出題テーマ(中分類)別の累計出題数
| 順位 | 章 | 出題テーマ(中分類) | 12年累計 | うちR08 |
| 1 | 第2章 | 多角化、M&A、戦略的提携、垂直統合 | 19問 | 1問 |
| 2 | 第4章 | 技術戦略、製品アーキテクチャ | 17問 | – |
| 3 | 第4章 | イノベーションのマネジメント、新規事業開発 | 16問 | 2問 |
| 4 | 第1章 | 環境分析、VRIO等 | 15問 | 2問 |
| 4 | 第3章 | 競争地位別戦略、競争優位の戦略 | 15問 | 2問 |
| 6 | 第3章 | 業界の構造分析、業界標準、5フォース分析 | 14問 | 2問 |
| 7 | 第2章 | PPM(製品ライフサイクル、市場シェア、経験曲線) | 11問 | 1問 |
| 8 | 第1章 | 戦略的意思決定、階層別戦略、戦略策定プロセス | 8問 | – |
| 8 | 第5章 | 国際経営戦略 | 8問 | 1問 |
| 10 | 第8章 | その他経営戦略論に関する事項 | 7問 | – |
| 11 | 第6章 | 企業の社会的責任 | 6問 | 1問 |
| 11 | 第7章 | 創業、事業承継、ファミリービジネス | 6問 | 1問 |
| 13 | 第2章 | ドメイン | 5問 | – |
最多は「多角化・M&A・戦略的提携・垂直統合」の19問。12年でほぼ毎年1〜3問出ている、戦略パート最大の得点源です。次いで技術経営の2テーマ(17問・16問)、環境分析/VRIO(15問)、競争地位別戦略(15問)、5フォース・バリューチェーン(14問)と続きます。上位6テーマで96問、全体の65%です。
逆に「ドメイン」は12年で5問、しかもR05を最後に3年出ていません。かつては頻出テーマとされていましたが、現在の重要度は下がっていると見るべきでしょう。
4.構造変化|出題範囲が「章立てどおり」に収束してきた
12年を前期(H27〜R03の7年)と後期(R04〜R08の5年)に分けて構成比を比べると、この試験の性格が変わってきたことがわかります。

図2 前期(H27〜R03)と後期(R04〜R08)の出題構成比
(1)「その他」の論点が消えた
第8章「その他」は前期に8.2%を占めていましたが、R04以降5年連続でゼロです。リストラクチャリング、アウトソーシング、事業継続計画、SECIモデルといった、章立てに収まりにくい論点が出題されなくなりました。
(2)第5章・第6章が「毎年1問の指定席」になった
国際経営戦略は前期3.5%(7年で3問)でしたが、R04から5年連続で毎年1問。企業の社会的責任にいたっては前期は7年で1問しかなかったのに、R03から6年連続で毎年1問です。どちらも「必ず1問出る枠」として扱ってよい状況になりました。
(3)技術経営(MOT)の比重は下がった
第4章は前期25.9%から後期17.7%へ縮小しています。ただし絶対数では依然として上位で、捨てられるテーマではありません。
まとめると、「雑多な論点が消えて、章立てのマス目を1問ずつ埋める形式へ移行した」というのが後期5年の傾向です。そしてこの流れが極まったのがR08でした。
5.R08の13問|何が出たのか
表3 令和8年度 戦略パート 全13問(赤網掛けは過去12年で初出の論点)
| 設問 | 章 | 出題論点 | 過去12年(H27〜R07)での出題 |
| 第1問 | 第1章 | VRIOフレームワーク | 5回(H29・H30・R02・R05・R07) |
| 第2問 | 第1章 | クロスSWOT分析 | 初出 |
| 第3問 | 第2章 | シナジー効果 | 初出(多角化テーマ全体では19回) |
| 第4問 | 第2章 | PPM | 8回 |
| 第5問 | 第3章 | 価値連鎖(バリューチェーン) | 2回(H28・H30)/8年ぶり |
| 第6問 | 第3章 | 競争優位の源泉 | 3回(H27・H29・R02) |
| 第7問 | 第3章 | ビジネスモデル | 初出 |
| 第8問 | 第3章 | ブルーオーシャン戦略 | 初出 |
| 第9問 | 第4章 | A–Uモデル(生産性のジレンマ) | 初出 |
| 第10問 | 第4章 | イノベーションのジレンマ | 1回(R04) |
| 第11問 | 第5章 | AAAトライアングル | 初出 |
| 第12問 | 第6章 | 企業倫理・CSR | 5回/R03から6年連続 |
| 第13問 | 第7章 | スリーサークルモデル | 1回(R03) |
6.R08の3つの特徴
特徴1 第1問から第13問まで、章立て順に完全整列
各年について「問題番号順に章番号を並べたとき、順序が前後する回数」を数えました。数字が小さいほど、テキストの章立てどおりに出題されているということです。

図3 出題順の乱れ(章順の逆転回数)
R08は逆転回数ゼロ。第1〜2問が第1章、第3〜4問が第2章、第5〜8問が第3章、第9〜10問が第4章、第11問が第5章、第12問が第6章、第13問が第7章と、一切の例外なく並んでいます。12年間で逆転ゼロの年はR08だけです。R03の15回をピークに、R05:5回、R07:4回と乱れが減ってきた流れが、ついに完成した形といえます。
受験生にとっての意味:本番で問題番号を見れば、いま自分がテキストのどのあたりを問われているか推測できるということです。第11問以降は国際経営・CSR・ファミリービジネスという「1問枠」の領域なので、時間配分の目安にもなります。
特徴2 13問中6問が「初出」の論点

図4 R08の各論点が過去12年で何回出ていたか
クロスSWOT分析、シナジー効果、ビジネスモデル、ブルーオーシャン戦略、A–Uモデル、AAAトライアングルの6つは、この12年間で一度も出ていない論点でした。半数近くが初見です。
一方で、VRIO(6回目)、PPM(9回目)、企業倫理・CSR(6年連続)、イノベーションのジレンマ、スリーサークルモデルといった定番も並んでいます。つまり、
「章立ての枠は固定し、その枠に入れる論点だけを入れ替える」という作り方です。枠を覚えるだけでは足りず、各枠のなかで隣接する未出のフレームワークまで押さえておく必要がある、ということになります。
特徴3 消えたテーマが2つある
ひとつは第1章の「戦略的意思決定・戦略策定プロセス」。エフェクチュエーションや創発的戦略として R03〜R07 の5年連続で出ていましたが、R08はゼロでした。
もうひとつは第4章の「技術戦略・製品アーキテクチャ」。12年で17問と第2位のテーマですが、R08はゼロで、第4章の2問はどちらもイノベーション論に寄りました。製品アーキテクチャがゼロだったのはH29・R04に次いで3回目です。
この2つは「消滅した」というより「たまたま出なかった」と見るのが自然でしょう。累計出題数が多いテーマが1年空けば、翌年に戻ってくる可能性はむしろ高まります。
7.R09に向けて|優先順位のつけ方
以上の分析から、令和9年度に向けた学習の優先順位を整理すると次のようになります。
表4 R09に向けた学習優先順位
| 優先 | テーマ | R08までの状況 | 押さえる用語 |
| A | 第2章 多角化・M&A・垂直統合 | 12年で19問と最多。R08はシナジー効果1問に留まったが、反動で複数出る年が多い | アンゾフ、シナジーの4類型、範囲の経済、取引コスト、PMI |
| A | 第1章 環境分析・VRIO | 12年で15問。R07・R08と2年連続で複数出題、直近3年連続 | VRIO、SWOT/クロスSWOT、コアコンピタンス、見えざる資産 |
| A | 第3章 競争戦略 | R08は4問と最多。5フォース・バリューチェーンと競争地位別が交互に出る | 5フォース、バリューチェーン、3つの基本戦略、競争地位別戦略 |
| B | 第4章 技術経営(MOT) | R08で製品アーキテクチャがゼロ。R09は反動で出る可能性が高い | 製品アーキテクチャ、デファクト、情報財、A–Uモデル、キャズム |
| B | 第2章 PPM | 12年で11問。ほぼ隔年で出続けている定番 | PPMの4象限、経験曲線、規模の経済、製品ライフサイクル |
| B | 第5章 国際経営戦略 | R04から5年連続。1問確保されている枠 | CAGE/AAA、折衷理論(OLI)、I–Rグリッド、新興国戦略 |
| B | 第6章 企業の社会的責任 | R03から6年連続。1問確保されている枠 | CSR/CSV、ISO26000、コーポレートガバナンス・コード、企業倫理 |
| C | 第7章 ファミリービジネス | 3年空いてR08で復活。頻度は低いが論点が狭い | スリーサークルモデル、事業承継、同族経営の功罪 |
| C | 第1章 意思決定・戦略プロセス | R08はゼロ。R03〜R07は5年連続で出ていた | エフェクチュエーション、創発的戦略、戦略階層 |
| D | 第8章 その他 | R04以降5年連続ゼロ。優先度は最も低い | (深追い不要) |
ポイントは3つです。第一に、第2章・第3章・第4章の3章で全体の3分の2を占めるので、ここに時間を集中すること。第二に、第5章・第6章の「毎年1問枠」は範囲が狭いので、費用対効果が非常に高いこと。国際経営とCSRは、それぞれ1〜2時間の学習で1問取れる可能性があります。第三に、R08で初出だった論点は、翌年また出る保証はないので、深追いせず「用語の意味がわかる」レベルで十分だということです。
R08で6問が初出だったことを踏まえると、R09も同程度の初見論点が出ると想定しておくべきです。ただし裏を返せば、残り7問は既出論点の焼き直しでした。過去問で押さえられる部分を確実に取り、初見問題は消去法で臨むという基本方針は、R08の結果を見ても変わりません。
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